母がガンと診断された2011年2月に出会いたかった一冊

いまさら、医者の本性を知ってもしょうがないと思っていたけれど・・・

ある日の夕方、買い物のついでに、いつもの本屋に立ち寄ってみると、健康カテゴリーの棚に川嶋 朗という一人の医者が書いた本「健康法で死なないための42のカルテ」と「医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか」の2冊の書籍が目に入った。

後者の本のオビには「99%の医者が抗がん剤を使わない!? それなのに、効果が期待できない治療をなぜ患者にすすめるのか」というキャッチコピーが赤字で印字されており

「たぶん読んだらイラッとする内容が、たくさん書いてあるのだろうなぁ。それに今更このような本を読んだところで、もう母はいないし医者の本性を知ってもムカつくだけだし・・・」

と思って、その日は前者だけ買って帰ったのだが、後日「でも、あの本を読めば、Blogで何か伝えられる内容があるかもしれない」と結局、次に同じ本屋に行った時に買ってきてしまった。


「医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか」書籍画像

やはり予想の通り読んだら腹が立ったが・・・

1回目は通読程度のスピードで読んでみた。案の定、医者の本性が分ってムカッときたし、読めば読むほどイライラしたが、2回・3回と読んでいくうちに「おや? この本はもしかしたら、今まさに癌と闘おうとしている人や闘病中の人。もしくは、その家族の方にとっては良書になるかもしれない」と思えてきたし「ガンから助かるためのヒントが見つかるかも?」と、買う前に思っていた僕の、この本に対しての評価が変わってしまった。


医者の本性

それはさておき、この本には主に8人の医師の自らがガンになってしまった時の治療方法を例としてあげているが、殆どの医者が医師という立場から患者という立場に変わった途端に「抗がん剤は投与しない」と言っている。

このことが顕著にわかる内容が書いてあったので抜粋すると、『これまで医師として多くの患者に抗がん剤を投与してきたが、劇的に効いたという症例があまりない。医師なら抗がん剤がさほど効果のないことぐらい知っている。患者には使うが自分は投与されたくないと、みんなそう思っている。(以下省略)-P52-』

この一文は「がん患者として長期生存する医者たち」(菊池憲一/海拓舎)というルポタージュの中からの紹介だったけれど、抗がん剤の投与に関することは勿論だが医者の本音というものが、わかった気がした。しかし・・・この一文を何度読み返してみてもムカつく。

それと川嶋 朗さんも『医者自身もしくは家族が、がんになると特に西洋医学だけでは治癒が望めない状態だったりすると、医者は藁にもすがる思いで、さまざまな代替医療を試そうとします。-P146-』と書いていて、更に『末期がんに対しては抗がん剤は、ほとんど効果がありません。-P90-』と断言しているのを読んだ時、母と2人で担当医がいる診察室で説明を受けた当時のことを思い出してしまった。


そう!!末期のガンには抗がん剤は効かない。でも、やってみないとわからないから効果があると信じて、母は地獄のような苦しみを何度となく耐えた。(でも、死んじゃった・・・)

僕がもっと早くに「大学病院じゃダメだから他の病院を探そうよ」と言えるだけの情報を掴んでいたら、「大学病院のための抗がん剤投与」を拒否する事もできたし、母を無駄に苦しませる事もなかったと思うと今でも胸が痛い。(ごめんね)

『医者は自分自身や家族が、がんになって、はじめて「ひとりの人間」になり「患者さん1人ひとりに事情や意思、希望がある」ということに思い当たるのです。-P127-』と、医者でないとわからない心境を書いているけれど、医学部時代にそういう「人として大切なこと」を大学は教えていってほしいと思うのは僕だけであろうか?

まぁ、この問題は日本全体の「文科省のバカヤロー問題」となってしまうので、このBlogでは割愛するけれど、自分の命を預けるならば、是非とも人の心の痛みがわかる医者に担当してもらいたいものである。


温熱療法について間違った知識を修正できた

温熱療法について僕が誤認識していたことを、この本では正しい知識に修正してくれた。

それは、高すぎる熱は逆効果であるということ。

母の闘病中「がん細胞は、39.3度以上で消えてなくなる。」と他の書籍で読んだことを覚えていて「高額な治療費を支払えるだけの財力がある人なら温熱療法で助かるのかぁ~」と、ため息をついてしまった事を思い出したのだけれど、この本には『全身を40度以上にすれば体力が奪われ、自己治癒力は著しく低下し、かえって逆効果になってしまいます。-P144-』と記されていた。

つまり、高熱でも39.3度~40度までの温度でないと温熱療法の効果は期待できないということ。単純に高い熱を利用すれば良いという訳ではないのだ。

今まで勘違いをしていたので、このことだけでも「食わず嫌いならぬ、読まず嫌い」をしなくてよかったと思う。


病気の他にも気をつけたいこと

闘病中には病気の他にも気をつけたほうが良いことがあって、それは世の中には悪い輩がいるということ。残念なことに、こういうヤツらは、いなくならない。川嶋 朗医師も注意を促していて『悪いヤツにダマされないために「手を出してはいけない代替療法」は3つある』として、

  • 1.「絶対に治る」と謳っている療法。
  • 2. 西洋医学含め、ほかの治療方法をすべて否定する療法。
  • 3. 法外に高い療法。

をあげていた。(-P147-)


それと、こうも書かれていて『「どんな状態の、どんながんにも効く」「どんな人にも効く」がんの治療法など、少なくとも現時点では、まず「ない」と言っていいでしょう』。まさにその通りだと同感した。

しかし、オレオレ詐欺にダマされてしまう人が後を絶たないのと一緒で「大丈夫 大丈夫 そんなインチキ療法や商品になんか俺(私)は、引っかからないよ」と思っている人ほど注意をしたほうがいい。

事は、自分もしくは家族の命にかかわることだし、ましてや本当に藁にもすがりたい精神状態になって、視野も狭くなっているから。それに最初は向こうから営業なんてしてこない。


だって情報は自分もしくは親近者が自ら集めて、こちらから、わざわざダマされる為のアクションを起こしている訳なので「ガンを治す○×療法」とか「ガンに効く○×」という商品など、高額なものでも無理をすれば買えてしまうものなど様々。

僕もフコイダンなどのサンプルを取り寄せて、母に話をしたことがあり、単発であれば買える金額だったけれど、継続して買うとなると高額になってしまう為にあきらめたことがあった。

サンプルと同時に添付されていた資料を見ると治験データなども表示されており、いかにも「がんに効きます」と言わんばかりのパンフレットだったけれど、素人にはチンプンカンプン。


医師の人達は、どう判断するのだろうと今更ながらに思う。でも、冷静になって考えてみると「ガンに効く!!」という商品は「ガンが治ります」とは必ずしも謳っておらず、「ガンに効く!!というけれど、全ての部位のガンにも効果があるのか?」と、少し考えればわかりそうなもの・・・

やっぱり視野が狭くなっているし寿命のカウントダウンが始まっている状態だと「冷静になれ」というのが難しいのも事実。

あくまで一般論だけど、僕はやはり「胡散臭い商品や人。それは・・・やはり、胡散臭いもの」なんだと思っているので、相手にしない事にしている。

ただ、実際に「プラセボ効果」ということがあるので、これが人体の不思議なところ。だから、本来なら科学的根拠のないサプリメントが売れているのだろう。


医者でもダマされる!?

医師でさえも胡散臭い療法を試してしまったという事例も書かれていたので、僕なりに要約してみると「当時41歳の内科医の女医さんは、乳がんの治療のために自らが調べた山梨県の、とある病院の全身温熱療法を試したけれど、1回だけの治療で逆に体調を崩してしまい、入院から7日目で退院してしまった。そして、強引にも数か月分の薬を、その病院から出されて請求された金額は1週間分の入院費と薬代で、なんと100万円だった」という内容だった。

お医者さんでも、こうなのだから高額な療法に素人は特に気をつけるようにしないと精神的にも肉体的にも痛い目にあってしまう。ちなみに川嶋 朗さんは『西洋医学であれ代替医療であれ、継続できないような金額の医療は、するべきではない。これが私の持論です。-P149-』と書いている。

闘病中の人は病気のことだけでも大変なのに、悪いヤツに騙されて更に体調を崩してしまう事のないように注意をしないといけない。


川嶋 朗さんが取り入れている「統合医療」とは

ひと言でいうと、いいとこどりの医療で、西洋医学と代替治療のどちらか一方に偏っていない。

つまりは、西洋医学と相補・代替医療とを組み合わせた医療なのだ。


がんもどき理論で知られている近藤 誠さんが唱えている「癌を放置するという考え方」は、極端すぎて実践するには勇気がいるが、川嶋 朗さんの統合医療は、僕も母にやってあげたかったので、今でもかなり悔しい。

「タラ・レバ」になってしまうが、もし川嶋 朗さんが「医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか」を2011年の2月以前に出版されていて、且つ僕が最初に、この本を読んでいたら、総合病院の医師から「〇×大学病院にしますか?それとも〇×病院にしますか?」と転院することを薦められた時「いえ、どちらでもなく統合医療を取り入れている〇×病院にします」と返答したと今なら断言できる。

僕の暮らしている地域内で何とか通える距離にあった、川嶋 朗医師と同じような統合医療を取り入れている病院のことを知ったのは残念ながら母が力尽きようとする直前だった。(ごめんね)


参考文献

  • 「医者は自分や家族が がんになったとき、どんな治療をするのか」
    • 著者:川嶋 朗(かわしま あきら)
    • 発行日:2015年11月2日


関連記事


コメント


認証コード0002

コメントは管理者の承認後に表示されます。